病院・クリニックの業務効率化|医療現場の課題を解決する事例とツール
医療システム
病院・クリニックの業務効率化|医療現場の課題を解決する事例とツール
多くの医療機関では、スタッフの人手不足や煩雑な事務作業といった課題に直面しています。
これらの課題を解決し、質の高い医療を提供し続けるためには、業務効率化が不可欠です。
ISBは、30年以上に渡り医療DXに関連する様々なアプリケーション開発に携わってきました。
「人手不足が深刻で業務を最適化したい」「システムを統合したい」「医療規格に即したアプリケーションを構築したい」といったお困りごとをよくご相談いただきます。
この記事では、病院やクリニックが業務効率化を進めるべき理由、具体的な方法、役立つITツール、そして実際に成功した事例を紹介します。
自院の生産性向上と労働環境改善のヒントとしてご活用ください。
なぜ今、病院の業務効率化が重要視されるのか?医療現場の課題
深刻化する医療現場の人材不足
少子高齢化に伴う労働力人口の減少は、医療業界においても深刻な問題です。
患者数は増加傾向にある一方で、医師や看護師などの医療スタッフの確保は年々困難になっています。
限られた人員で多くの患者に対応しなければならず、現場のスタッフ一人ひとりにかかる負担は増大し続けています。
このような状況下で医療の質を維持・向上させるためには、業務の無駄をなくし、スタッフが専門的な業務に集中できる環境を整えることが不可欠です。
業務効率化は、人材不足という構造的な課題を乗り越えるための重要な鍵となります。
紙媒体中心の事務作業による業務圧迫
医療現場では、今なおカルテや問診票、レセプト、紹介状など、多くの書類が紙媒体で運用されています。
これらの書類の作成、保管、検索、共有には多くの時間と手間がかかり、本来注力すべき医療行為や患者対応の時間を圧迫する一因となっています。
特に、過去のカルテを探し出す作業や、手書き書類の情報をシステムに転記する事務作業は、非効率の温床です。
紙媒体中心の運用は、情報のリアルタイムな共有を妨げ、多職種連携の足かせにもなりかねません。
業務効率化のためには、これらの書類を電子化し、一元管理する体制への移行が求められます。
働き方改革に対応するための労働環境改善の必要性
2024年4月から医師にも時間外労働の上限規制が適用され、医療機関はより一層の労働時間管理を求められるようになりました。
長時間労働が常態化しやすい医療現場において、この法規制に対応し、スタッフの健康とワークライフバランスを守ることは経営上の重要課題です。
業務プロセスに潜む非効率な作業を削減し、全体の労働時間を短縮しなければ、規制の遵守は困難でしょう。
業務効率化は、単なる生産性向上だけでなく、働き方改革関連法に対応し、魅力的な職場環境を構築することで、貴重な人材の定着を図る上でも極めて重要です。
病院の業務効率化がもたらす4つのメリット
病院の業務効率化は、単に作業時間を短縮するだけでなく、多岐にわたるメリットをもたらします。
スタッフの負担を軽減し、専門業務に集中できる環境を整えることで、医療の質そのものが向上します。
また、ヒューマンエラーの削減による安全性の確保や、患者の待ち時間短縮による満足度の向上など、病院に関わるすべての人々にとって良い影響が期待できます。
スタッフの業務負担が軽減され、コア業務に集中できる
業務効率化によって、これまで多くの時間を要していた書類作成、情報検索、電話応対といった非コア業務が削減されます。
例えば、電子カルテや予約システムを導入すれば、カルテを探す手間や予約調整の時間が大幅に短縮されます。
これにより、医師や看護師は、患者の診察やケア、コミュニケーションといった、専門性が求められる本来のコア業務により多くの時間を割くことが可能になります。
結果として、スタッフの身体的・精神的な負担が軽減され、仕事への満足度やモチベーションの向上にも寄与し、離職率の低下も期待できます。
ヒューマンエラーを減らし、医療の安全性を向上させる
医療現場におけるヒューマンエラーは、患者の安全に直結する重大な問題です。
手作業による情報の転記ミス、薬剤の投与量の間違い、口頭での指示の聞き間違いなど、多忙な業務の中では様々なエラーが発生するリスクがあります。
ITツールを活用して業務を自動化・システム化することで、こうした人為的なミスを大幅に削減できます。
例えば、電子カルテとオーダリングシステムを連携させれば、手書きによる判読不能な指示や転記ミスを防げます。
正確な情報に基づいた業務プロセスを構築することは、医療過誤のリスクを低減させ、医療全体の安全性を高める上で非常に有効です。
診療の質が高まり、患者満足度の向上につながる
スタッフが事務作業などの付帯業務から解放され、患者と向き合う時間が増えることは、診療の質の向上に直結します。
患者の話をじっくりと聞いたり、病状や治療方針について丁寧に説明したりする時間的な余裕が生まれるため、患者は安心感と納得感を得やすくなります。
また、院内の情報共有がスムーズになることで、多職種が連携して一貫性のある質の高い医療を提供できるようになります。
このような質の高い医療体験は、患者の不安を和らげ、病院に対する信頼感を醸成し、結果的に患者満足度の向上という形で表れます。
患者の待ち時間を短縮し、ストレスを緩和する
病院での長い待ち時間は、多くの患者が不満を感じる点です。
Web予約システムを導入すれば、患者は自宅から好きな時間に予約ができ、院内での待ち時間を予測しやすくなります。
また、Web問診システムによって来院前に問診を済ませたり、自動精算機で会計をスムーズにしたりすることで、受付から診察、会計までの一連の流れが効率化されます。
これらの取り組みは、患者が院内で待つ時間を物理的に短縮し、ストレスを大幅に緩和します。
快適な受診環境を提供することは、他の医療機関との差別化にもなり、患者から選ばれる理由の一つとなります。
今日からできる!病院の業務を効率化する具体的な方法
まずは現在の業務内容を見直して無駄を洗い出すことから始められます。
その上で、情報の共有方法を改善したり、一部の業務を外部に委託したりするなど、ITツールに頼らない方法でも効率化は可能です。ここでは、比較的導入しやすい具体的な方法を紹介します。
業務フローを見直し、マニュアルを作成して標準化する
業務効率化の第一歩は、現在の業務フローを正確に把握することです。
受付から診察、会計に至るまで、各工程で「誰が」「何を」「どのように」行っているかを可視化し、非効率な作業や重複している業務がないかを確認します。
課題が明確になったら、無駄を省いた新しい業務フローを設計し、誰でも同じ手順で作業ができるようにマニュアルを作成します。
業務を標準化することで、特定のスタッフにしかできない「属人化」を防ぎ、業務品質を一定に保つことができます。
また、新人スタッフの教育コストを削減し、即戦力化を早める効果も期待できます。
院内文書のペーパーレス化で情報共有をスムーズにする
院内に溢れる紙の書類を電子データ化(ペーパーレス化)することは、業務効率化に大きな効果をもたらします。
カルテや各種同意書、紹介状などを電子化して一元管理すれば、保管スペースが不要になるだけでなく、必要な情報を即座に検索・閲覧できるようになります。
複数のスタッフが同時に同じ情報にアクセスできるため、部署間や職種間での情報共有が格段にスムーズになり、伝達ミスや確認の手間を削減可能です。
物理的に書類を探したり、受け渡しのために移動したりする時間がなくなることで、スタッフはより付加価値の高い業務に集中できます。
医療事務や往診を外部サービスに委託(アウトソーシング)する
院内のすべての業務を内製化する必要はありません。
特に、レセプトの作成・点検といった専門的な医療事務や、往診時の車両運転、スケジュール管理などのノンコア業務は、外部の専門業者に委託(アウトソーシング)するのも有効な手段です。
専門知識を持つ業者に任せることで、業務の正確性や質が向上するだけでなく、法改正などへの対応もスムーズになります。
院内スタッフは、本来の専門業務である患者対応や医療行為に集中できるため、院全体の生産性が向上します。
自院のリソースを最も重要な業務に集中投下するための戦略的な選択肢と言えます。
院内の情報共有を密にし、チーム医療を推進する
質の高い医療を提供するためには、医師、看護師、薬剤師、検査技師といった多職種のスタッフが円滑に連携する「チーム医療」が不可欠です。
チーム医療を効果的に機能させるには、迅速かつ正確な情報共有が欠かせません。
例えば、患者の状態変化や治療方針の変更などを、関係者全員がリアルタイムで把握できる仕組みを構築することが重要です。
ビジネスチャットツールや電子カルテの共有機能などを活用し、いつでもどこでも必要な情報にアクセスできる環境を整えましょう。
密なコミュニケーションは、医療の質と安全性を高め、業務の効率化にも直接的に貢献します。
病院の業務効率化を加速させるおすすめITツール7選
手作業や紙媒体での業務には限界があり、抜本的な効率化を図るにはITツールの活用が効果的です。
受付や問診、診療、情報共有など、院内のさまざまな業務に対応したツールが開発されています。
これらのツールを導入することで、これまで時間のかかっていた作業を自動化し、スタッフの負担を大幅に軽減することが可能です。
ここでは、病院の業務効率化に役立つ代表的なITツールを紹介します。
【受付業務】Web予約システムで電話対応と待ち時間を削減
Web予約システムは、患者がインターネットを通じて24時間いつでも診察の予約や変更を行えるツールです。
このシステムを導入することで、これまで受付スタッフが対応していた電話による予約業務を大幅に削減できます。
スタッフは電話応対に追われることなく、来院した患者への対応や会計業務に集中できるようになります。
また、患者にとっても、診療時間外に予約が取れる利便性や、院内での待ち時間が短縮されるメリットがあります。
予約管理が自動化されるため、ダブルブッキングなどの人為的なミスを防ぐ効果も期待できます。
【問診業務】Web問診システムの導入で患者情報を事前に把握
Web問診システムは、患者が来院する前にスマートフォンやPCから問診票を入力できる仕組みです。
来院前に患者の主訴や既往歴、アレルギー情報などを詳細に把握できるため、医師は診察をスムーズに開始できます。
患者は院内で紙の問診票を記入する手間と時間がなくなり、待ち時間の短縮につながります。
また、入力された問診内容は自動で電子カルテに反映されるため、スタッフが手入力で転記する必要がありません。
これにより、転記ミスを防ぎつつ、受付から診察への流れを大幅に効率化することが可能です。
【資格確認】オンライン資格確認で受付業務の手間を省く
オンライン資格確認は、マイナンバーカードのICチップや健康保険証の記号番号を利用して、患者の保険資格情報をオンラインで即時に確認できるシステムです。
このシステムを導入すると、受付スタッフが保険証の情報を手入力する手間が不要になり、入力ミスや確認作業にかかる時間を大幅に削減できます。
最新の保険資格を正確に把握できるため、保険証の有効期限切れや資格喪失に起因するレセプトの返戻も防げます。
受付業務の負担を軽減し、より正確な保険請求を実現するための基盤となるツールです。
【診療業務】電子カルテでカルテ管理と情報共有を一元化
電子カルテは、患者の診療情報を電子データとして記録・管理するシステムで、業務効率化の中核を担います。
紙カルテのように保管スペースを必要とせず、患者名などで検索すれば瞬時に必要な情報にアクセスできます。
院内のネットワークを通じて、医師や看護師、その他スタッフがリアルタイムで情報を共有できるため、迅速な意思決定とスムーズな多職種連携を支援します。
オーダリングシステムやレセコンと連携させることで、診療から会計までの一連の業務をシームレスにつなぎ、病院全体の業務効率を飛躍的に向上させることが可能です。
【処方業務】電子処方箋で薬局との連携をスムーズに
電子処方箋は、これまで紙で発行していた処方箋を電子化し、医療機関と薬局の間でオンラインで共有する仕組みです。
医師がシステムに処方内容を登録すると、患者は全国どの薬局でも処方箋の受け取りが可能になります。
薬局側では、患者が来局する前に処方情報を確認できるため、薬剤師が事前に調剤準備を進められ、患者の待ち時間短縮に貢献します。
また、複数の医療機関からの処方情報を一元的に確認できるため、重複投薬や危険な飲み合わせのチェックが容易になり、医療の安全性向上にもつながります。
【書類作成】AI OCRで紙の書類を自動でデータ化する
AIOCRは、AI技術を活用して紙の書類に書かれた手書き文字や活字を高い精度で認識し、テキストデータに変換する技術です。
医療現場では、他院からの紹介状や健康診断の結果、各種同意書など、依然として多くの紙媒体が扱われています。
これらの書類の内容を電子カルテなどに入力する作業は、時間と手間がかかるだけでなく、入力ミスの原因にもなります。
AIOCRを活用すれば、スキャンするだけで書類の内容を自動でデータ化できるため、この入力作業を大幅に効率化し、スタッフの負担を軽減することが可能です。
【情報共有】ビジネスチャットで院内コミュニケーションを円滑に
ビジネスチャットツールは、院内スタッフ間のコミュニケーションを迅速かつ確実にするための有効な手段です。
電話や口頭での伝言とは異なり、メッセージがテキストとして残るため、伝達漏れや「言った・言わない」のトラブルを防げます。
部署やチーム、特定の案件ごとにグループを作成してやり取りができるため、必要な情報が必要なメンバーに的確に伝わります。
緊急時の連絡や、多忙な医師へのちょっとした確認事項なども、相手の時間を過度に束縛することなく行えるため、院内全体のコミュニケーションロスを減らし、チーム医療の推進に貢献します。
【事例紹介】ITツール導入で業務効率化に成功した病院の取り組み
業務効率化の必要性は理解していても、具体的にどのような効果が得られるのかイメージしにくいかもしれません。
ここでは、実際にITツールを導入し、業務の効率化やスタッフの負担軽減に成功した医療機関の事例を紹介します。
自院の課題と照らし合わせながら、ツール導入後の具体的な変化を想像するための参考にしてください。
電子カルテ導入でカルテを探す時間がゼロになったクリニックの例
あるクリニックでは、日々増え続ける紙カルテの保管スペースの確保と、診察時に必要なカルテを探し出す時間に課題を抱えていました。
特に混雑時には、カルテを探すためにスタッフが慌ただしく動き回り、患者を待たせてしまうことも少なくありませんでした。
そこで電子カルテシステムを導入した結果、患者名や診察券番号で検索するだけで瞬時にカルテが表示されるようになり、カルテを探す時間は完全にゼロになりました。
これにより、スタッフは受付や患者の案内に集中できるようになり、診療全体の流れがスムーズになるなど、業務効率が大幅に改善されました。
予約システムの導入で電話対応業務を8割削減した病院の例
ある病院の受付では、ひっきりなしにかかってくる予約や変更の電話に対応するため、常に数名のスタッフが配置されていました。
電話が集中する時間帯には他の業務が滞ることもあり、スタッフの大きな負担となっていました。
この課題を解決するためにWeb予約システムを導入したところ、多くの患者がオンラインで予約を済ませるようになり、電話による問い合わせ件数が約8割も削減されました。
その結果、受付スタッフは電話対応から解放され、来院した患者への丁寧な対応や会計業務に専念できるようになり、受付全体のサービス品質と業務効率の向上が実現しました。
業務効率化を成功に導くための3つのステップ
業務効率化は、単にITツールを導入すれば成功するわけではありません。
目的意識のないまま進めると、かえって現場が混乱したり、期待した効果が得られなかったりすることもあります。
着実に成果を出すためには、計画的なアプローチが不可欠です。
ここでは、業務改善を成功させるための基本的な3つのステップについて解説します。
Step1. 現状の業務内容を洗い出し、課題を明確にする
業務効率化に取り組む最初のステップは、現状を正確に把握することです。
まず、院内の各部署で行われているすべての業務内容を具体的にリストアップします。
その上で、それぞれの業務に「誰が、どれくらいの時間をかけているのか」「どのような手順で行っているのか」を可視化します。
このプロセスを通じて、「特定の業務に時間がかかりすぎている」「ミスが発生しやすい工程がある」「作業が属人化している」といった、改善すべき課題が明確になります。
現場で働くスタッフからのヒアリングも交えながら、実態に基づいた課題を抽出することが重要です。
Step2. 解決すべき課題の優先順位を決め、具体的な目標を立てる
洗い出された課題のすべてに一度に取り組むのは非現実的です。
そのため、次に解決すべき課題の優先順位を決定します。
「改善による効果が大きいもの」「緊急性が高いもの」「比較的容易に取り組めるもの」といった観点から、どの課題から着手するかを判断します。
優先順位が決まったら、その課題に対して「受付の待ち時間を平均〇分短縮する」「カルテの入力ミスを〇%削減する」といった、具体的で測定可能な目標を設定します。
明確なゴールを定めることで、関係者全員が同じ方向を向いて取り組むことができ、施策の評価もしやすくなります。
Step3. 施策を実行した後に効果を測定し、改善を繰り返す
目標達成のための具体的な施策(ツールの導入、業務フローの見直しなど)を実行に移します。
重要なのは、施策を「やりっぱなし」にしないことです。
施策の実行後、一定期間が経過したら、必ずその効果を測定します。
Step2で設定した具体的な目標がどの程度達成できたかを、データを基に客観的に評価しましょう。
もし期待した効果が得られていない場合は、その原因を分析し、新たな改善策を検討・実行します。
この「計画・実行・評価・改善」のサイクルを継続的に回していくことで、業務効率化をより高いレベルで実現し、定着させることが可能です。
まとめ
病院における業務効率化は、深刻化する人手不足や働き方改革への対応という喫緊の課題を乗り越え、持続可能な医療を提供するために不可欠な取り組みです。
ITツールの導入や業務フローの見直しは、スタッフの負担を軽減するだけでなく、ヒューマンエラーの削減による医療安全の向上、そして診療の質の向上を通じて患者満足度を高めることにも直結します。
ISBは、①豊富な受託経験、②OneStopソリューション、③医療ガイドラインや医療機器規格への幅広い知見の3つを強みとしています。
業務を洗い出して課題を明確にし、優先順位をつけて具体的な改善策を計画的に実行するお手伝いをさせていただきます。
https://isb-dx.isb.co.jp/medical-dx
本記事で紹介した方法やツール、事例を参考に、自院に合った業務効率化を推進していただきたいと思います。