車載システムとは?種類やネットワークの規格、最新開発動向まで解説|コラム|株式会社アイ・エス・ビー
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車載システムとは?種類やネットワークの規格、最新開発動向まで解説

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車載システムとは?種類やネットワークの規格、最新開発動向まで解説

車載システムとは?種類やネットワークの規格、最新開発動向まで解説

車載システムとは、現代の自動車に搭載される電子制御システムの総称です。エンジン制御からカーナビゲーションまで、安全性・快適性・環境性能を向上させるために不可欠な役割を担っています。

近年の自動車開発では、ソフトウェアが車両の価値を決定づける「SDV(Software Defined Vehicle)」という概念が主流となりつつあり、ハードウェアとソフトウェア両面で技術革新が急速に進んでいます。この記事では、車載システムの基礎から最新の開発動向までを網羅的に解説します。


車を動かす頭脳!車載システムとは何かを分かりやすく解説

車載システムとは、自動車に搭載される多種多様な電子的機能を制御する仕組み全体を指します。その中核をなすのがECU(電子制御ユニット)と呼ばれる小型のコンピューターであり、これらが車載ネットワークを通じて相互に情報をやり取りしながら協調して動作します。

このECUとソフトウェアから成る複雑な構成によって、エンジン制御やブレーキアシスト、エアコンの温度調整といった、自動車のあらゆる機能が実現されています。


車の「走る・曲がる・止まる」を電子制御するECUの役割

ECU(Electronic Control Unit)は、自動車の基本的な動作である「走る・曲がる・止まる」を精密に制御する頭脳の役割を果たします。具体的には、エンジンやモーターの出力を最適化するパワートレイン系、ブレーキやステアリングを制御するシャシ系など、機能ごとに専門のECUが配置されています。

これらのECUは、各種センサーから送られてくる情報をリアルタイムで処理し、アクチュエーター(駆動装置)に最適な指示を送ることで、走行性能、安全性、燃費効率を向上させます。近年の自動車では、1台あたり数十個のECUが搭載されており、協調しながら複雑な車両制御を実現しています。


【目的別】車載システムの主要な5つの種類

車載システムは、その目的や機能に応じて大きく5つの種類に分類されます。エンジンやモーターを制御し走行性能を司る「パワートレイン制御」、ブレーキや操舵を担い安定性を高める「シャシ制御」、快適装備を管理する「ボディ制御」、ナビなどの情報を提供する「情報・エンタメ(IVI)」、そして安全運転を支援する「ADAS」です。
以下に、それぞれのシステムの役割について一覧で詳しく解説します。



エンジンやモーターを司る「パワートレイン制御システム」

パワートレイン制御システムは、自動車の動力源であるエンジンやモーター、そして動力をタイヤに伝えるトランスミッションなどを統合的に制御する、走行性能の根幹を担うシステムです。ガソリン車では、燃料噴射量や点火タイミングを最適化して燃費効率と出力を両立させます。電気自動車(EV)やハイブリッド車においては、モーターとバッテリーの状態を監視・制御し、エネルギー効率を最大化する重要な役割を担います。

このシステムは、アクセル操作に対する応答性やスムーズな加速を実現するだけでなく、排出ガスをクリーンに保つための環境性能にも大きく貢献しています。


安定した走行性能を支える「シャシ制御システム」

シャシ制御システムは、自動車の「曲がる」「止まる」といった挙動を安定させ、ドライバーの意図通りに車両を操作できるよう支援するシステム群です。代表的なものに、急ブレーキ時にタイヤのロックを防ぐABS(アンチロック・ブレーキ・システム)や、カーブでの横滑りを防止するESC(横滑り防止装置)があります。また、電動パワーステアリングもこの一種で、速度に応じてハンドルの重さを調整し、軽快な操作感と安定性を両立させます。

これらのシステムは、さまざまなセンサーで車両の状態を常に監視し、危険な状況を未然に防いだり、回避したりすることで、安全なドライビングを足元から支えています。


エアコンやドアロックなどを担う「ボディ制御システム」

ボディ制御システムは、自動車の走行性能に直接関わる部分ではなく、乗員の快適性や利便性を向上させるための機能を制御するシステムです。具体的には、エアコンによる温度管理、パワーウィンドウの開閉、ドアロックやキーレスエントリー、ワイパーの作動、ヘッドライトや室内灯の点灯制御などが含まれます。これらの機能は、それぞれ独立したスイッチだけでなく、統合的に管理するECUによって制御されており、車速に応じてドアを自動でロックするなど、他のシステムと連携した動作も行います。

ドライバーや同乗者が快適に過ごせる車内環境を実現する上で欠かせないシステムです。


ナビや音楽を楽しむための「情報・エンタメ(IVI)システム」

情報・エンタメ(IVI:In-Vehicle Infotainment)システムは、ドライバーや同乗者に情報提供と娯楽機能をもたらすシステムです。カーナビゲーションによる経路案内、ラジオや音楽・動画の再生、ハンズフリー通話といった機能が中心となります。近年では、スマートフォンとの連携機能が強化され、スマートフォンのアプリを車載ディスプレイ上で操作できるようになりました。

さらに、Android Automotive OSのような汎用OSの採用が進んだことで、システムの高機能化とアプリケーション開発の柔軟性が向上しています。これにより、OTA(Over-The-Air)による機能追加やアップデートも容易になり、ユーザー体験が継続的に向上します。


安全運転をサポートする「先進運転支援システム(ADAS)」

先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver-Assistance Systems)は、カメラやレーダー、ソナーといったセンサー技術を活用して、車両の周辺状況を認識し、ドライバーの安全運転を支援するシステムです。代表的な機能には、前方の車両や歩行者を検知して衝突の危険を警告し、自動でブレーキを作動させる「衝突被害軽減ブレーキ」や、高速道路などで先行車に追従走行する「アダプティブクルーズコントロール(ACC)」があります。

これらの機能は、ドライバーの認知・判断・操作を補助することで、ヒューマンエラーによる事故のリスクを低減させます。ADASは完全な自動運転に向けた基盤技術としても位置づけられています。


多数のECUを連携させる車載ネットワークの仕組み

現代の自動車には、機能ごとに多数のECUが搭載されており、それらが協調して動作することで複雑な制御を実現しています。このECU同士を効率的かつ確実に接続し、情報を相互にやり取りするために不可欠なのが車載ネットワークです。このネットワークは、用途や求められる通信速度、信頼性に応じて、CANや車載イーサネットといった複数の通信プロトコルが使い分けられています。

この神経網のような情報通信基盤によって、車両全体のシステムが統合的に機能します。



従来から使われている代表的な通信規格「CAN」

CAN(Controller Area Network)は、自動車内のECU間通信で長年にわたり広く使用されてきた、信頼性の高いシリアル通信規格です。この規格は、特に耐ノイズ性に優れており、エンジンやブレーキなど、高い信頼性が求められる制御システムで標準的に採用されてきました。通信速度は最高で1Mbps程度と、近年の高速通信規格と比較すると低速ですが、リアルタイム性が要求される制御命令やセンサーデータの送受信には十分な性能を持っています。

パワートレイン制御やボディ制御など、比較的データ量が少なく、確実なデータ伝達が不可欠な領域で、今もなお重要な役割を担っています。


高速・大容量通信を実現する「車載イーサネット」の重要性

ADASの高度化や自動運転技術の進展に伴い、カメラ映像やLiDAR(ライダー)の点群データなど、大容量の情報をリアルタイムで処理する必要性が高まっています。従来のCANではこうした大容量データの伝送に対応できないため、高速通信が可能な車載イーサネットの重要性が増しています。車載イーサネットは、100Mbpsから数Gbpsという高速・大容量通信を実現し、複数のセンサーからの情報を統合ECUへ集約するバックボーンネットワークとして活用が進んでいます。

これにより、より複雑で高度な運転支援機能や、将来の自動運転システムの実現が可能になります。


【最新トレンド】ソフトウェアが車の価値を決める「SDV」とは?

SDV(Software Defined Vehicle)とは、自動車の機能や性能、価値が、搭載されるハードウェアだけでなく、ソフトウェアによって定義・決定されるという考え方です。従来の自動車開発はハードウェアが中心でしたが、SDVではソフトウェアをアップデートすることで、購入後も車両の性能向上や新機能の追加が可能になります。

この変化は、自動車メーカーだけでなく、IT業界の巨大企業も巻き込んだ開発競争を加速させており、自動車は「所有する製品」から「継続的に進化するサービス」へとその価値を変えつつあります。


複雑な電子基盤を整理する「E/Eアーキテクチャ」の進化

E/Eアーキテクチャ(Electrical/Electronic Architecture)とは、自動車に搭載されるECUやセンサー、ワイヤーハーネスといった電子部品の配置や接続構成のことです。従来は、新しい機能を追加するたびにECUと配線を付け足していく「分散型アーキテクチャ」が主流でした。

しかし、機能の増加に伴いECUの数が100個を超えるようになると、ワイヤーハーネスの重量やコスト、複雑性が大きな課題となります。そこで現在では、車両の機能をいくつかの領域(ドメイン)に分け、それぞれを高性能なECUで統括する「ドメイン型」や、さらに集約を進めた「ゾーン型」といった、より整理された集中型のアーキテクチャへの進化が進んでいます。


高性能化の鍵を握る「統合ECU(ドメインコントローラー)」の登場

E/Eアーキテクチャの進化に伴い、従来は機能ごとに分散していた複数のECUの役割を、高性能なプロセッサを搭載した一つのECUに集約する「統合ECU」が登場しました。これはドメインコントローラーとも呼ばれ、例えばADAS関連の複数のECU機能を一つのADASドメインコントローラーにまとめる、といった形で導入が進んでいます。統合ECUにより、部品点数の削減やワイヤーハーネスの軽量化が実現できるだけでなく、ソフトウェアの処理能力が向上し、アップデートも容易になります。

これにより、より高度で複雑な機能を効率的に開発・実装することが可能となり、SDVの実現を支える中核技術となっています。


購入後も機能がアップデートされるコネクテッド技術 

コネクテッド技術は、自動車がインターネットなどの外部ネットワークと常時接続されることで、さまざまなサービスを提供する技術です。この技術の中でも特に重要なのが、OTA(Over-The-Air)によるソフトウェアアップデート機能です。これにより、ユーザーはディーラーに車を持ち込むことなく、無線通信を通じて車両のソフトウェアを最新の状態に保つことができます。

このアップデートは、カーナビの地図更新やセキュリティパッチの適用にとどまらず、運転支援システムの性能向上や新しいエンターテインメント機能の追加など、自動車の価値そのものを購入後に高めることを可能にします。車がスマートフォンのように継続的に進化する、SDV時代を象徴する技術です。


車載システム開発の今後の展望と変化

車載システム開発は、SDV(Software Defined Vehicle)への移行という大きな変革期を迎えています。ソフトウェアが車の価値を左右するようになることで、開発の主戦場はハードウェアからソフトウェアへと移りつつあります。

この変化に伴い、開発プロセスや求められる技術も大きく変化しており、膨大かつ複雑化するソフトウェアの品質をいかに保証するか、そのためのテスト手法の確立も重要な課題となっています。


ハードウェアからソフトウェア中心へと移り変わる開発現場

従来の車載システム開発は、ハードウェアの仕様が決まってからソフトウェアを開発するウォーターフォール型が一般的でした。しかし、SDVの時代では、市場のニーズに迅速に対応するため、ソフトウェア開発で主流のアジャイル開発やDevOpsといった手法が導入され始めています。また、ハードウェアとソフトウェアの開発を切り離し、それぞれを並行して進めることで開発期間を短縮する動きも活発です。

これにより、自動車業界でもIT・ソフトウェアエンジニアの重要性が一層高まっています。ハードウェアの制約から解放されたソフトウェアが、車の新たな価値を創造していく開発スタイルへの転換が求められています。


サイバー攻撃から車を守るセキュリティ対策の必要性

自動車がインターネットに接続されるコネクテッドカーの普及は、利便性を向上させる一方で、サイバー攻撃の脅威という新たなリスクを生み出しています。外部からの不正なアクセスにより、ブレーキやステアリングといった重要機能が遠隔操作された場合、人命に関わる重大な事故につながる可能性があります。

そのため、車載システムの開発段階からセキュリティを考慮した設計(セキュリティ・バイ・デザイン)を行うことが不可欠です。また、国際的な法規(UN-R155)でもサイバーセキュリティ対策が義務化されており、車両のライフサイクル全体を通じた継続的な監視と対策が、自動車メーカーにとって必須の要件となっています。


車載システムに関するよくある質問

車載システムに関して、よく寄せられる代表的な質問とその回答を紹介します。


Q1. 車に搭載されるECUの数はどれくらいですか?

高級車では100個以上のECUが搭載されることもあります。ECUの数は車種やグレード、装備によって大きく異なりますが、自動車の高機能化に伴い、その搭載数は増加傾向にあります。ただし、近年はE/Eアーキテクチャの進化により、複数のECUを統合する動きも進んでいます。


Q2. SDV(Software Defined Vehicle)で私たちのカーライフはどう変わりますか? 

購入後もソフトウェアのアップデートによって車の機能が追加・進化し、スマートフォンに近い感覚で車を利用できるようになります。例えば、新しい運転支援機能が追加されたり、エンタメ機能が向上したりと、車が古くなるのではなく、むしろ便利になっていく体験が可能になります。



Q3. 車載システムの開発にはどのようなプログラミング言語が使われますか? 

従来からC言語やC++が主流ですが、システムの用途に応じて他の言語も使用されます。エンジン制御など高い信頼性とリアルタイム性が求められるシステムではC/C++が中心です。

一方、カーナビなどの情報・エンタメ系では、JavaやKotlin、AI関連技術ではPythonが使われることも増えています。


まとめ

車載システムは、ECUを核として自動車のあらゆる機能を電子制御する仕組みであり、その進化は自動車の性能向上に大きく貢献してきました。現在、業界は「SDV」という大きな変革期にあり、ソフトウェアがハードウェアの価値を定義する時代へと移行しています。

この変化に対応するため、複雑化する電子基盤を整理するE/Eアーキテクチャの再構築や、統合ECUによる高性能化が進められています。また、コネクテッド化に伴うサイバーセキュリティ対策も、安全な車社会を実現する上で極めて重要な要素となっています。




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